製造業エンジニアの道

自分を伸ばし、会社を伸ばす自己革命

開発現場の実態

f:id:kamonk:20180607053929j:plain

 

いくつかの企業の開発部門で、このスライドを見せると、多くのエンジニアが大きくうなづきます。

「思い当ることありますか?」と聞くと、

「たぶん全部当てはまるかもしれません。」と返ってきます。

「どれが一番重要な問題ですか?」と聞くと、

う~んと唸って、でも皆の答えは必ずしも一致しません。

 

これらは、現場で実際に出ている”症状”ですよね。

このひとつひとつの原因を考えて対処しようとする、なんてことをあなたの職場ではやってないでしょうか?

 

”熱がある”から解熱剤を飲む、”咳が出る”から咳止め、”下痢気味”だから下痢止め、”背中が痛む”からマッサージ、そして”寒気がする”から厚着をする。

実は、すべての症状の根本の原因が”肺炎”だったとしたら、”肺炎”に手をうたなければ解決にはならない、ということです。

 

ひとつひとつの症状を明らかにすることはとても大事なことなのですが、それぞれに対処療法をとってしまうことが問題なのです。

 

開発現場の症状も、元をただしてみると、実は根本的な原因があるはずなのです。

 

2002年ころに日本でもベストセラーになった「ザ・ゴール」という本はご存知でしょうか?いわゆるTOC(制約の理論)の考え方を小説風に教えてくれる本です。

 

組織の中で起こる問題は、全体を見ずに「部分最適」に終始してしまうことで、解決できないということを教えてくれるのですが、もっと基本的なところは、問題を起こすのはすべて人々の「行動」であって、その行動は、組織の「評価基準」によってもたらされ、評価基準は、組織の「方針」で決まってくるということを理解することが重要なのです。

 

わかりやすく言うと、誰かが悪いことをして、その結果問題が起きてるのではなく、すべての人がいいと思って(会社の方針や行動基準に従って)行動していて、その結果で問題が起きているので、問題解決は、その方針や行動基準の矛盾(対立構造)を理解しないとできないということです。

 

たとえば、いい製品を早く市場に出すというのは、どんな企業でも目指すところ(方針)になります。しかし、その大方針の達成度を評価する基準はいくつかあります。

QCD(品質、コスト、納期)必達!なんて言葉を開発現場では良く耳にします。しかし、3つの基準を本当に平等に扱っているかというと、かなり怪しいと言わざるを得ません。

開発マネージャさんたちが評価されるのは、実は納期の優先順位が一番高いのです。それが一番目に入りやすいからです。

 

”内容を理解していない設計者にサブユニット設計を任せる”ということが、例えば、設計の後戻りを発生させるひとつの「行動」だとすると、その行動をとる優先度の高い目的は、納期を守る、ということになります。

 

それに対して、品質を最重要とする、という評価基準を第一優先にすると、本来は、”内容を知らない設計者にサブユニット設計を任せない”ということにならなければなりません。

 

つまり、ここに組織の対立構造(ジレンマ)があって、しかも、このこと自体を簡単には責められない、ということがわかってきます。

 

そうなのです。

この組織内の対立構造をすべて明らかにして、全体をみて、部分最適でない対応をするために、トップダウンで実態に当たらなければ、いつまでも同じようなところを行ったり来たりという状態になってしまうのです。