製造業エンジニアの道

自分を伸ばし、会社を伸ばす自己革命

自慢する文化を作ってA3報告書を書く

f:id:kamonk:20180914134757p:plain 

 

グローバリング(株)の稲垣社長と協業しながら、企業向けの製品革新コンサルをやる中で、トヨタ式として知られている「A3報告書」の文化を作ることを指導している。

 

A3報告書は、トヨタで使われているということで有名だが、実は1970年代、80年代にTQCが日本で流行ったころは、多くの企業で採用されていた。

 

問題解決や提案などを、必ず一枚のA3にすべてを書ききる形で、一枚にまとめるため、無駄なことを省き、読み手がわかりやすいように、起承転結をしっかりとさせて、ストーリーのように書くことで、自分自身の考えもしっかりとまとまり、何よりも上層部の方に短時間で誤解なく理解いただけるというものだ。

 

ところが、最近我々が目の当たりにするのは、メーカー企業でも報告書の質が大きく低下していることである。

 

私が会社に入ったころは、技術者の仕事は、

  • 図面を書くこと
  • 報告書を書くこと
  • イデアを出すこと(特許など)

だと教えられた。

 

このうち、報告書を書くことが、技術者の仕事から優先度が大きく下がっているようだ。

 

ひどい例では、社内の報告にパワーポイントを多用している場合だ。

パワーポイントは、好きな枚数を使って、好きなことを好きなだけ書けると思っているのかもしれない。

 

私も、上司としてパワーポイントでの報告を受けることがあったが、報告を聞いている途中で何を言いたいかがわからなくなり、「あと何枚説明するつもりだ?」と嫌味を言ったことが何度かある。

 

パワーポイントの報告を禁止しようとしたこともあったが、大きな組織で、全体の賛同が得られなかった。

 

A3報告書は、自身の理解を深めさせる、上司への報告を簡潔化させ、かつ誤解を最小にする効果があるが、それ以外にも、本人の論理思考力を向上させる効果があることと、実は一番大事なのは、組織内のコミュニケーションを活性化させるのだ。

 

A3報告書、あるいはA3マネージメントといったほうがいいかもしれないが、これは書き手が書いたらおしまいではなく、書いたときから、その報告書を使って上司とのコミュニケーションが始まるのだ。

 

上司と内容やストーリー、不足していること、方向性が違っていないかなどをQ&Aのキャッチボールをしながら、報告書をブラッシュアップしていくのだ。

 

さらに、上司以外の仲間などとも共有し、さらにいいものにしていく中で、仕事の進め方、方針などについて議論を深め、皆が同じ方向を向くように仕向けていく。場合によっては、そのコミュニケーションから新たなアイデアも生まれる。

 

それが、A3マネージメントであり、A3文化なのだ。

 

この文化を作っていくには、トップマネージメントの強力な後押しが必要だ。

今、改革を進めている企業では、トップから強力なお墨付きをいただいてA3文化作りを進めている。

 

しかし、それでも、まだ越えなければならない壁がある。

 

仕事のやり方、つまりプロセスも変えなければならなかもしれない。

 

そもそも、報告書を書く優先度が下がっているのは、図面やソフトウェアのコードを書く、つまり設計作業が何よりも優先し、かつ、その次は日々の雑多な仕事、根回しや会議などで忙殺され、報告書を書く時間がないというのが原因になっているからだ。

 

報告書を書くのは時間もかかるし面倒だ。口で言えば済むではないか、というのが、多くのベテランの意見のようだ。

 

このままでは、組織内の暗黙知が埋もれていく。若手が伸び悩む。そして、企業内のコミュニケーションが希薄になり、新しいコンセプトが生まれない、つまらない会社になっていってしまう。

 

危機感を持ってほしい。

 

さて、ひとつ秘策がある。

自分の若いころを思い出してみた。

忙しい中にも、自分で好きなことをやっているという気持ちも持てていたので、忙しさは苦にはなっていなかった。

 

そして、自分で考えて、自分でチャレンジしてみた実験結果やアイデア検証については、やった後に、早く誰かに報告したいという気持ちが芽生え、早く、しかも上手に報告書を書きたいと思っていたことを思い出した。

 

直属の上司だけではなく、他の組織の人や同期の仲間などにも、自慢したかったのかもしれない。

 

そうだ。「自慢」する文化を作ればいいのだ。

 

自慢する、つまり自分の仕事が大好きで、そして誇りを持てる。これ、ものすごく大事なことだ。

 

そのために、まず、好きなことをやらせる時間を少しずつでも作ることだ。

いくつかの企業で取り入れているのは、20%ルールなどと名付けて、業務時間の20%は、通常業務以外の自分の好きなこと(いずれ会社の役に立つなどの縛りは必要だが)をやるというものだ。

 

私もこれを進めたことがある。ただ、今まで長い間、与えられた仕事しかしてこなかった向きには、何をやったらいか迷うケースもある。

 

何人か選んで、多くの人が興味を持てそうなテーマをピックアップして、リーダーを立て、この指とまれ方式で、まず、業務から離れること、好きなことを見つけるという習慣を身につけさせる必要もあるかもしれない。

 

人に自慢したくなる報告書、これがキーワードだ。

 

そして、定期的に自慢大会をやって、トップがご褒美を出してもいい。

 

文化を変える、それも大きく変えることは、意外に小さな行動から始まるかもしれない。