製造業エンジニアの道

自分を伸ばし、会社を伸ばす自己革命

組織のジレンマ

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組織の中で起こる問題は、すべて組織の中にあるジレンマが原因である。

問題を起こすのは、すべて人の行動である。

これらは、TOC(制約の理論)での教えだ。

 

組織は、トップの大きな方針で運営される。

そして、トップ方針のもと、各組織はそれぞれの部門方針を決め、評価基準を設定する。

 

評価基準は、個々の人事考課に直結し、組織の中で個人が評価されるもとになるので、組織人としては、この評価基準に基づいて行動するのが当然となる。

 

ところが、この評価基準は、通常は複数(多数)設定されて、場合によってはそれぞれの間でジレンマを抱えることがある。

 

例えば、トップ方針が収益をアップする、ということにすると、その方針に従うと、ひとつの評価基準は売上向上となり、もう一つが例えばコストを下げる、ということになったとする。

 

売上を上げる行動として、在庫を増やして顧客要求にいつでも対応出来るようにする、ということと、コストを下げるために在庫を減らすという行動は、完全に対立する。

 

つまり、同じ大方針のもとで作られた2つの評価基準が、まったく異なる行動を要求することになるわけだ。

 

これが、組織の中の制約条件になる。

 

こんなことは実は組織内にたくさんある。

製造業で良くあるのは、QCD(品質、コスト、納期)目標を必達せよ、という大方針だ。

一見すると当たり前のことのように思えるが、Q、C、Dの間でジレンマが発生することは大いにありうることだ。

 

最近、多発する様々な企業でのデータ改ざん事件は、ほとんどの場合、このQCDの間のジレンマが原因である。

 

特にQとDの間、またはQとCの間のジレンマによって、データ改ざんが行われる。

 

なぜかいつもQ(品質)が犠牲になる。

C(コスト)やD(納期)は、はっきりしていて、トップに対してだけでなく市場に対しても嘘がつけない。

 

さらに、ミドルマネージャにとって、自身を評価してもらうのに、もっともアピールしやすい指標だ。

 

品質は、もちろんデータ化できるのであれば、数字で表されで明確なはずだが、この数字が市場で出回るわけではない。

さらに、データの意味が市場ではっきり理解されているわけではなく、さらには企業内においてもデータの意味が明確に理解されていない場合もある。

 

歴史的に作り上げてきた品質基準が、数字や測定方法だけが継承されてきて、数字の意味やモラルまでが継承されていないケースも多数ある。

 

コストや納期のようにはっきりしない品質基準のために、コストや納期が遅れそうになると、トップや市場からプレッシャーのかかる現場は、時として勝手な判断で品質基準を捻じ曲げてしまうことが起こってしまうのだ。

 

ドルマネージャは、多少の解釈の変更は実際の品質にも問題がないだろうと勝手な解釈に走るわけだが、それは、自分の評価を悪くしないという理由が大きい。

 

トップとしても、決して自分で改ざんを指示していなくとも、QCDのバランスと多少ゆがめても、収益拡大という最大の方針を優先させてしまう。

 

まさに構造的な問題であって、本質的な問題に手を打たない限り、同様の問題は繰り返されるだろう。

 

組織の中に悪人はいない。

 

組織のジレンマを捉えて、本質を見よう。

 

また、自分の評価だけを考えるマネージャにならないよう、本質を見抜く力を強化し続けることが、技術者に求められることだ。

 

TOC(制約に理論)は、この組織のジレンマを見抜く力をしえてくれる。

 

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