知識と能力
知識と能力(脳力)は車の両輪だ。
両方が揃うと、大きな力になる。
専門書を読んで専門知識をつけるだけでは、技術者として大きな仕事はできない。
知識をつける方法はみんなが知っているが、能力(脳力)、つまりその知識、情報を処理する能力を高める方法はあまり知られていないかもしれない。
人間の脳は無限の力を持っているのだが、人間はそのほとんどを使えていないのだそうだ。
それでも、人間の脳は年令とともに退化していく。
記憶力などは、目に見えて落ちていく。
CPU(脳)の性能だって、年令とともに衰えていくのはやむを得ないのかもしれないが、もともと性能分を使ってないとすれば、使い方しだいで何とでもなる気もする。
ところで、能力(脳力)は、いったいどんな力なのだろうか。
知識を使って、新しいアイデアを創り出す力であり、知識(情報)を加工して新しいものを生み出す力であったり、情報の裏にある真実や本質を見抜く力なのだと思う。
このような能力は、個人個人で考えると、もともとあまり意識されていない。
年令とともに、知識が上がれば、そのまま能力も上がっていると思う人もいるかもしれないが、脳科学的には、ある年令以降は進歩しないのだそうだ。
企業の中で、全体を俯瞰する能力や決断をする能力は年配の人の方が高いように思うかもしれないが、それは知識と経験だけの差であって、能力の差ではないと言うことだ。
ここで、ひとつ大事なことがある。
それは経験だ。
経験によって、知識が増強される。
仕事のやり方もうまくなったような気がするのだが、実は、経験は時としてマイナスの効果ももたらす。
それ「思い込み」、「先入観」だ。
「思い込み」「先入観」は、人間の行動を制限する。
発想を限定的にし、恐れを生み、思考範囲を著しく狭めてしまう。
上司が慎重で、新しいことに否定的だった経験は多くの人にあるのではないか。
実は、「思い込み」「先入観」は、思考能力を低下させるだけでなく、企業内のコミュニケーションを悪化させる。
「思い込み」「先入観」は、コミュニケーションする場合の双方に違った形で存在する。だから、時として会話が噛み合わない。
でも、この噛み合わない会話に、企業内では打つ手があまりないのが実情だ。
思考プロセスに、企業内で統一した考え方が必要で、お互いの「思い込み」「先入観」があることを前提に、コミュニケーション・プロセスを構築する必要がある。
TOC(制約の理論)の思考プロセスは、まさにこの問題を解決してくれる。
組織の抵抗の6階層
- 対応しようとしている問題を、問題として認めない
- ソリューションの方向性に同意できない
- ソリューションが問題を解決するとは思わない
- このソリューションは、もし、実行するとマイナスの影響を引き起こす
- 提案されているソリューションの実行を妨げる障害がある
- その結果起こる未知のことへの恐怖感
これらの企業内の抵抗を解除するのが、TOCのフレームワークだ。
知識と能力は、別の物という考えをもう一度認識し、能力の向上は思考プロセスによって大きく改善できることをお伝えしたい。