「稼げる」エンジニアとは?
エンジニアが「稼ぐ」とはどういう意味か?
誰だってお金は欲しい。
サラリーマンであっても、できるだけたくさん給料が欲しいと思っているはず。
しかし、いくら欲しいかと聞かれると答えに困ってしまわないだろうか。
周りの人よりも少し多めがいいとか、もしかするとその程度の願望か。
エンジニアとは、ある意味、特殊な才能を持った(持っているはずの)言わばタレントだ。
でも、貪欲に稼ごうとするエンジニアをあまり見たことがない。
もちろん、大儲けしたい、ビッグになりたいと起業する人も日本でも増えてきているが、サラリーマン・エンジニアを見ている限りは、平均的な状況に満足とは言わないまでも、あえてそこから状況を変えようとはしていない。
極論すると「稼ごう」としていない、と言えるかもしれない。
一方、エンジニアを雇っている企業の経営者からみると、エンジニアは企業に利益をもたらす大切な人材だ。
だから、少なくともエンジニアは稼いでいる。
しかし、たくさん稼げるエンジニアとそんなに稼いでいないエンジニアはいる。
そう、簡単な話で、稼げる人も稼げない人も、それなりの給料がもらえるように、均等に利益を配分している。
もちろん、貢献度の違いを査定して昇給や賞与で差をつけるが、稼げるエンジニアがその稼ぎに見合った給料をもらえることはない。
これが資本主義と言えばそれまでだが、その資本主義という制約を百歩譲って認めた上で、それでも最終的に自分の給料を上げるにはどうしたらいいか、これを考えてみよう。
サラリーマンの給料を上げる方法
いずれ独立したいという考えは、ここでは置いておいて、サラリーマン・エンジニアを続ける前提で、どうやって高い給料をもらえるようになるか、これは3つの方法があると思っている。
- 高い地位に就くこと
- 高い給料をもらえる会社に転職すること
- 会社の業績を上げること
当たり前のことだ。
これらについて、一人一人のエンジニアが貪欲に、そして戦略的に取り組んでいれば、もしかすると3の会社の業績は顕著に上がって、企業全体の平均給与が大幅に上がるのかもしれない。
現実にはそうはいかない。なぜだろう?!
もちろん、全員が高い地位には就けない。つまりポストは限られていて、企業内競争があるということもある。
でも私は、2と3のやり方を変えることができれば、世の中は大きく変わるように思う。
2は、決してネガティブに捉える必要はない。
転職するエンジニアが増えることは、社会にとってプラスだと思う。
今の日本の終身雇用制度は、日本企業の甘えを増長させると思っている。
個人が強くなることで、会社と個人の契約関係をもっと対等に近い契約関係に変えていくことで、企業はもっと社員と真摯に向き合うようになる。
もちろん個人も、他社から高い給料でオファーをもらうためには、世の中で通用する技術力なり、ビジネス力なり、何らかの強味を持ってそれをアピールできなければならない。
そう、これがエンジニアの一つ目の「稼ぐ」力だ。
エンジニアが稼ぐためには、個人力を伸ばし続ける。戦略的に自分の強味を作り、強化していかなければならない。
しかし、忙しいエンジニアは、この戦略的な自己強化が出来ていないのではないだろうか。
「忙しすぎる。」
これも、もしかすると言い訳になってしまう場合もある。
「自分のやりたいこと」と「自分が出来ること」、そして「伸ばしていきたいこと」が一致しているエンジニアは意外と少ない。
忙しいのと同時に、今の仕事をやりながらその中で自分を伸ばすことに熱意が持てていないのかもしれない。
私は、自分の「棚卸し」を定期的にすることを勧めている。
自分のことは、意外に自分では見えないものだ。
「何がやりたいのか」「何ができるのか」そして、「それをやることで、自分にどんな得があるのか」つまり、この道で本当に稼げるようになるのかを、常に考えて欲しいと思っている。
さらに言うと、多くの人が、自分をどうやって伸ばすのか、どうしたら効果的に自分を強化できるのかを知らない。
一生懸命仕事をする、たくさんの情報をインプットする、とにかく出来ること、好きなことを一生懸命やれば、きっと結果はついてくるだろう、という感じなのではないか。
単純なことだが、まず自分の実力、現状を客観的に的確に把握することがとても大事で(As-Is分析)、次に、自分がどうなりたいか、どのくらい、どうやって稼ぎたいかという目標設定も同様に重要だ(To-Be設定)。
そして、この現状と目標のギャップをどうやって効果的に埋めて行くかが、エンジニアが持つべき戦略となる。
若いエンジニアと話をすると、自分はとにかく技術を伸ばしたい、と言い、マネージメントには興味がない、とい言うケースがとても多いように感じる。
冒頭の3つの稼ぐ方法の一番目を、この時点で放棄しているように見える。
そしてこの考えは、単にこの一番目を放棄しているだけでなく、実は2と3に対しても大きなマイナスになっているのだ。
高い地位に就く、他社で通用する、そして今の企業の業績を上げる、このどれも、一人一人の技術力アップだけでは達成できないのだ。
戦略的に勉強しよう
本はできるだけたくさん読むのがいいだろうと思う。
いい本もあれば、そうでもないものもある。たくさん読んで、いいものから必要なものを吸収すればいい。
ただ、これは頭に入れてほしい。同じ本を読んでも、何をどれだけ吸収できるかは、人によって非常に大きな差があるということだ。
「読書」を否定しない。でも何をどう学びたいか、その学びを体に染みつけるために何をやるかは知っておいた方がいい。
目標設定は非常に重要だ。
ハーバード大学の調査で、大学在籍中に人生の目標を持っていなかった人は、全体の84%で、この人たちの年収を”1”とすると、目標を立てていた人の年収はその2倍、さらに、目標を紙に書いていた人の年収は、10倍だそうだ。
人生の目標を絶対に立てよう。
そして、その目標に、自分自身の「稼ぎ」を意識しよう。
さらに、その目標、稼ぎの先にある社会への貢献など、人生の目的を入れよう。
できるだけ、志高く目的を設定すると、人生は楽しくなるものだ。
今、所属する企業の収益を上げる、という目的はまだまだ小さいかもしれない。
日本企業全体を強くするとか、日本中の体の不自由な人に少しでも楽で生きがいのある生活環境を作るとか、できるだけ大きな目標を立てよう。
その下の階層に、その目的を達成する指標として、まずは今の会社の収益を上げるとすると、人生はこれまで以上に生き生きしてくるはずだ。
そしてこれがエンジニアの二つ目の「稼ぐ」力だ。
志高い目的と目標を立てることが出来ると、そこに到達するためには、具体的に自分がどう変わらなければならないかが見えてくる。
技術力はエンジニアにとって第一優先かもしれないが、その技術力や優れた技術で日本を、あるいは世界を変えるためには、他人を巻き込んで実現する”力”が必要だ。
私が多くのエンジニアに不足していると思うのは、”国語力”だ。
国語力というと漠然としているので、もう少し具体的に見ると、
”本質”を読み解く力だ。
”抽象度”をレベルを変えて物事を見力だ。
顧客の立場で顧客を語る”ストーリー力”だ。
シンプルに的確にそして迅速に物事を読みとく”論理思考力”だ。
なぜなぜを繰り返して、真実に迫る”質問力”だ。
私はこの5つの力をエンジニアの基礎脳力として身につけてほしいと思っている。
この力を身につけると、会社の中で起こっていること、世の中で起こっていることを客観的に的確にそしてシンプルに捉えることができる。
報告書を一所懸命に作って上司に持っていくと、想定外の質問や指摘を受けて、打ちのめされてかえって来るという経験はないだろうか?
上司は、人の悪いところを指摘すればいいんだなんて、恨めしく思う前に、自分の見てる視点の狭さを反省すべきだ。
これは立場が与えてくれる場合もあるが、訓練で強く出来る。
論理思考力、本質力、抽象化力、ストーリー力、質問力をつけながら、技術レベルだけでなく、仕事をこなす、そして最終的に「稼ぐ」力を身につける勉強を戦略的にしてほしい。
私が目指す、エンジニアが自身の力とネットワークで強くなるための仕掛けは、この5つの力を身につけるところから始めたいと思っている。